SSブログ

コトバと、箱。 [つれづれ]

20210601_181519.jpg
ひさびさの東京芸術劇場プレイハウス@池袋。
野田秀樹氏のNODA・MAP『フェイクスピア』。
ふれこみでは野田氏ならでは「いまこそ、言葉」らしい。
「フェイク(fake)」+「シェイクスピア(Shakespeare)」の
タイトルからして・・・そうだよね。

緊急事態宣言下ではあるけれど客席はほぼ満、補助席も出てる。
ロビーで数分マスクを外して居ようものなら、すかさず、
「マスクを・・・」とスタッフさんが申し訳なさそうにジャスチャーしてきた。
この人たちが後から刺されたらやだかんね、しました。

しかし、マスク、暑っ!

2時間5分ノンストップ、体の芯からどんどん燃えてくる。
暑い、顔も背中もお尻も汗びっしょり。このエネルギー・・・なんなの。

わたしは野田氏の作品は「芸術作品」と思っています。
だれだれの俳優が出ているからとか、初舞台のだれだれ女優を観たいとか、
そーゆーのを遥かに超越。きっと役者たちも求められているのだろう。
役作りとかそーゆーのをぶっ壊して光の塊になって飛び出すことを。

ここからはネタバレもあるので、観劇予定の方は気を付けてね。

シェイクスピアのパロディなタイトルだからシェイクスピア物語の
登場人物なんかを役者に一人何役も振り分けてやるのかと思うじゃないですか。
(あ、思わない? 浅はかでごめん)
違うの。あいや、確かに「ハムレット」とか「マクベス」とかの
悲劇の要素たんまりなんだけど・・・、ストーリーの案内人は「イタコ」。

はい。
恐山とセットの、あの、イタコです。

そして、野田氏がもっとも心を尽くしたのは、36年前の日本にあった事故。
これ・・・、戯曲を書くのに相当いのちを燃やしたはずだ。

真ん中に立つ高橋一生くんは(なれなれしくてすまん)は箱を持っている。
灰色のちいさな、箱。
この箱は、パンドラの箱であり、山中に投げ出されたボイスレコーダー、
野田氏のパンフレットの言葉で言うなら「コトバの一群」。。。。

橋爪功さん、白石加代子さんと、重鎮がほぼ出ずっぱりという過酷さ。
村岡希美さんの特徴ある声とナイロンで鍛えられたセリフ回し。
川平慈英さんの勢い、大倉孝二くんの代役となった伊原剛志さん。
伊原さん、かなりのプレッシャーだったろうな。
前田敦子ちゃんはちいさな体でがんばっていた。
いつぞやからか野田氏はアンサンブル(群衆)を多用するのだが、
このたびのアンサンブルはめっちゃ迫力あったし、躍動していた。

野田氏いわく「一生くんは演技をしない」のだそう、なんかわかる。
ただ声を発していればどこへでも透明に重なっていく感じ。
以前、ドラマの仕事で一生くんのインタ(カコミですが)したとき、
おー、この人にあんま演技のことを聞いちゃいかんなーと思った。
なぜか。
直感、あるいは野生で言動しているのを、無理矢理こざかしい言葉に
置き換えざるを得ないから。めっちゃ小難しい演劇青年かと思ったつのっ。

そーゆーの要らない、野田氏の作品には。役作りとかいらない。
だから、
役者も本も演出も装置も衣裳も音楽も、ついでに客席も、
ひっくるめて「芸術作品」になる。

これまたむかし、野田氏にインタ(制作発表でしたが)した際、
なんの話の流れだったか、「書く、ということは孤独にならざるをえません。
それを恐れては書けないし、芝居を書くべきでない」のようなこと
わたしの質問に対しておっしゃってくれた。

――あ。

そのときから、「書くのであれば(野田氏とわたしの雲泥の差はあれど)、
自らを孤独に追い詰めなければその先の光はない」と腹をくくったんだがな。

ちょっと・・・忘れていた(逃げていた)。

はい。
で。

いま、この作品を鑑賞できて本当によかった、という列挙!

●ことばは不自由である。巧みになればなるほど空々しい。
 自分がずっと思ってきたことをもう一度思い出せ。
●声があるからことばなのか、ことばがあるから声なのか。
 はじめに言葉ありき、その真の意味を手繰る。
 言葉で名づけることの恐ろしさを自覚する。
●死者の声を聴け。
●ノンフィクションの生々しさをリアルなフィクションにできるか?
●いまの世のなんと上っ面なことか。自省も含めて。
 なんと茶番な。社会想念にからめとられるな!

●いちど、恐山に行ってみよう!

さすがライター、うまいこととを言うね・・・!は、誉め言葉じゃない。
もしもそう言われたら、ああ、ダメだとわたしは自省する。

うまいことを言いたいんじゃない。
死者と生者の声を言いたいんだ。

目に見えないことばを目に見える文字に閉じ込めることの重大さを知る。

続編を書かなきゃな・・・って思い始めたところに、
野田さん、ありがとう。


コメント(0) 

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。